「日本語なら説明できる。でも、英語の原稿にしようとすると手が止まる」
そんなときは、いきなり長い英文を書かず、何を伝えるかを決める → 短い英文にする → 声に出して直す、の順で進めてみてください。最初から立派な英語にせんでも大丈夫です。
僕は、早稲田大学の留学生を対象とした授業で、英語で講演したことがあります。

ただ、ここで当日の原稿や準備を再現するわけではありません。ここからは、大学の公開資料も参考に整理した、読者向けの原稿作りの例です。例文はこの記事用に作ったもので、実際の講演原稿ではありません。
最初に、日本語で三つだけメモする
まずは「誰に」「何を分かってほしいか」「そのために何を説明するか」を書き出します。英訳はその後です。
たとえば、社内でファイルのバックアップについて説明する、架空の場面ならこんな感じ。
- 聞き手:ITに詳しいとは限らない同僚
- 伝えたいこと:大事なファイルを、パソコン一台だけに置かないでほしい
- 説明すること:今の保存状態、故障した場合のリスク、別の場所にコピーを残す案
「バックアップについて全部説明する」では、どこまで話すか決めにくいですよね。「ファイルを失わないための保存方法を相談する」なら、必要な話を選びやすくなります。
実際の仕事では、社内ルールや情報の機密性も確認してください。この例は保存先や製品を推奨するものではなく、話を組み立てる練習用です。
言いたいことを、短い英文に分ける
先ほどのメモなら、説明の中心を次の三文にできます。
These files are stored only on this laptop.
このファイルは、このパソコンにしか保存されていません。If the laptop fails, we may lose them.
パソコンが故障すると、ファイルを失うかもしれません。I suggest keeping a second copy in another location.
別の場所にもコピーを保存することを提案します。
現状、リスク、提案を、一つずつ渡す形です。難しい単語を増やすより、「今、何の話をしているか」が追える原稿を目指します。
聞き手は、本を読むときのように前の一文へ戻って読み直せません。ブリティッシュコロンビア大学の資料でも、聞いて理解してもらう原稿には、短い文やなじみのある言葉、言い換えが役立つと説明されています。参考:UBC「Anticipating Audience Needs」
専門用語が必要な発表もあります。何でも簡単な単語に置き換えるのではなく、必要な用語は残し、聞き手が知らなそうなら短く説明を添える。そこは正確さを優先したいところです。
冒頭と終わりをつなぐ
説明の中心ができたら、前後に一文ずつ足してみましょう。以下も、同じ架空の社内説明の例です。
冒頭:今日は何を話すのか
Today, I'd like to discuss how we can protect these files.
今日は、このファイルをどう守るか相談したいと思います。
この後に、先ほどの三文を続けます。
終わり:次に何をするのか
Let's check which backup options meet our company's requirements.
会社の要件を満たすバックアップ方法を確認しましょう。
これで、話題を示すところから次の行動まで、一つの流れができます。立派なスピーチを作る前に、このくらいの小さな原稿で練習してもええと思います。
原稿を「口で使える形」に直す
書けたら、実際に声に出してみます。黙読できることと、止まらずに話せることは、同じ確認ではありません。
途中でつまずいたら、ひたすら読み直す前に、原因を分けてみてください。
- 単語の発音が分からない → 辞書の音声を確認する
- 一文が長くて迷子になる → 文を分ける
- 何を伝える文か自分でも曖昧 → 日本語のメモへ戻る
原稿には、顔を上げる場所や少し間を置く場所を、自分用に書き込んでも構いません。
These files are stored / only on this laptop.
[いったん聞き手を見る]
If the laptop fails, / we may lose them.
この「/」は、今回の練習用の目印です。ここで必ず区切るという発音規則ではありません。
メアリーワシントン大学の資料でも、自然に間を置く位置で改行し、強調する語に印を付けることや、練習でつまずく文を直すことが紹介されています。参考:University of Mary Washington「Using a Script」
最後は、時間を測って通してみる
一文ずつ言えたら、冒頭から終わりまで声に出し、時間を測ります。スライドを使うなら、切り替えや図の説明も含めて試してください。
長すぎる場合は、まず重複した説明や、今回なくても伝わる部分を削れないか確認します。時間に押されて、最後の結論だけ早口になるのは避けたいですよね。
録音を聞く、同僚に一度聞いてもらう、という方法もあります。ノーザンイリノイ大学は、実際に発表する形でのリハーサル、時間配分の確認、録音で話し方を振り返ることを案内しています。参考:Northern Illinois University「Rehearsing the Presentation」
本番で原稿を見てよいかは、発表のルールを確認しましょう。原稿を手放すこと自体が目的ではありません。
まずは、自分の仕事について伝えたいことを一つ選ぶ。短い原稿を作って、声に出し、引っかかった一文を直す。今日はそこまでで十分、準備が一つ進みます。
プレゼンではなく、相手とやり取りしながら技術を説明する準備は、「技術を英語で説明する」にまとめています。
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