海外の展示会に行ったのに、何を聞いたらええか分からへん。
僕が海外の技術調査を始めた頃は、専門用語が足りないことに加えて、そもそも話す内容が定まっていませんでした。「情報収集したい」はある。でも、何を確かめたいのかが曖昧やったんです。
そこから技術の話ができるようになったとき、準備したのは難しい英単語だけではありません。何に使いたいか、自分たちで何を試したか、どこが分からないか、相手に何を聞きたいか。 この四つを英語で話せるようにしました。
この記事では、その経験をもとに、技術説明を会話につなげる準備の仕方を紹介します。
話す材料は自分で調べる中でできた
僕が関心を持ったのは、ディープフェイク検知というAIの技術でした。調査する中で、もっと詳しく知りたい、日本へ持ってこられないか、と考えるようになりました。
専門用語を覚えるだけでなく、自分たちでも技術を使い、検証や評価をしました。すると、試したからこそ気になる点や、自分なりの考察が出てきたんです。
その内容を英文にして、音読する。ChatGPTとの会話や英会話の場で、自分の扱う技術や課題を説明する練習もしました。
海外のスタートアップと話すときも、自社がやりたいことと、調査・検証の中で見えた課題を伝えるようになりました。そこから、相手が持つ知見や新しいアイデアを聞き、自分たちの検討に役立てられる会話につながっていきました。
何でも即興でしゃべれるようになってから仕事の話を始めた、という順番ではありません。自分が話したい内容を持って、それを英語で説明できるようにしたのが僕のやり方です。
まず日本語で四つに分ける
英訳する前に、次の欄を埋めてみます。長い文章にする必要はありません。
| 話す順番 | 自分のメモに書くこと |
|---|---|
| 用途 | 誰の、どんな困りごとに使いたいか |
| 試したこと | 何を、どんな条件で確かめたか |
| 課題 | まだ分からないことや、想定と違ったこと |
| 質問 | 今日、相手に確かめたいこと |
「高精度なAIです」だけでは、何を相談したいのかまでは伝わりません。「この仕事で使いたい。ここまでは試した。次はこの条件を確かめたい」まであれば、相手も返事を考える材料を持てます。
試していないことを、無理に埋める必要もありません。まだ文献を読んだ段階なら、その状態を伝えます。分かっていることと期待していることを分けるのも、技術説明の一部やと思います。
四つを英語にするとどうなるか
以下は、架空の「機械の振動データを分析するツール」を使った練習用の例です。僕の会社の技術、実際の検証結果、当時の商談を再現したものではありません。
用途を伝える
We want to use this tool to help maintenance staff decide which machines need closer inspection.
このツールを使い、保守担当者がどの機械を詳しく点検すべきか判断できるようにしたい、と伝える例です。
ここではアルゴリズムの説明より先に、仕事で何をしたいかを伝えています。「誰が何を判断するのか」が分かると、その後の技術の話にも目的ができます。
試した範囲を伝える
We tested it with recorded vibration data. We haven't tested it on running machines yet.
記録済みの振動データでテストしました。稼働中の機械では、まだテストしていません。
一つ目が実施したこと、二つ目が未実施のことです。テストしたという事実だけで、現場でも使えると結論づけないようにしています。
自分の説明では、公開してよい範囲でデータの種類や条件を足します。数字を使うなら、数値だけでなく単位や比較対象も確認しておきたいところです。
分からない点を伝える
We don't yet know whether the same threshold works for different types of machines.
同じしきい値を、別の種類の機械でも使えるかは、まだ分かっていません。
thresholdは、ここでは判断の境目にする値のことです。聞き手がその用語を知らなければ、何の値かも説明します。
「分からない」とだけ言うより、どの条件が未確認かを伝えた方が、次の質問を作れます。検証で見つかった問題と、まだ試していない疑問も混ぜないようにします。
相手への質問につなげる
What should we check before using it on another type of machine?
別の種類の機械で使う前に、何を確認すべきですか。
ここまでの背景があれば、この質問が何についての相談なのかが伝わります。「何か情報をください」から、自分たちの次の検討について聞く会話へ変えられます。
もちろん、相手が答えを持っているとは限りません。教えてもらった案も、そのまま自社で成立するとは決めず、必要な条件を持ち帰って確認します。
簡単な英語にしても意味は変えない
短くしたいからといって、「変化を見つける」を「故障を予測する」に変えたら、別の性能の話になってしまいます。言い切れないことまで、言い切る必要はありません。
日本能率協会の技術英検公式は、技術英語で明確さ・簡潔さ・正確さを重視しています。書くための指針ですが、会話の原稿を見直すときにも参考になります。技術英語とは
専門用語は、同じものなら呼び方をそろえる。知らない相手には説明を足す。Googleの技術文書教材にも、用語の一貫性と、読み手に不慣れな語を説明する方針があります。こちらも文章向けの指針で、会話の効果を保証するものではありません。Google Technical Writing
たとえばalertを「確認を促す通知」として説明したのに、途中からerrorと呼び替えると、実際に異常が起きた話なのか分かりにくくなります。かっこいい言い換えより、同じものを指せているかを確認したいです。
読めたら質問を受ける練習へ
僕は、説明する英文を作って音読し、会話でも使う練習をしていました。これから練習するなら、原稿を読めたところで終わらず、説明のあとに質問を一つもらう方法があります。
たとえば、技術を知らない相手には「何に使うものか分かったか」、技術を知る相手には「判断に足りない条件は何か」を聞く。相手に合わせて、確かめたいことを変えます。
質問に詰まったときも、全部を英語力の問題にせんでええと思います。日本語でも答えが決まっていなければ、技術や条件を調べる方が先。答えはあるのに英文が出なければ、その部分を短い文にして練習します。
外部の講師やAIで練習するときは、公開情報や架空の条件を使ってください。会社の資料、顧客情報、未公開の結果は、社内で認められた範囲と方法以外では共有しません。
僕にとって、英語で仕事の話をすることは、用意した説明を全部しゃべり切ることではありませんでした。目的と疑問を伝えた先で、相手から自分にはなかった考えをもらえる。そのやり取りができたことが、大きな変化でした。
日常会話から仕事で使う英語へ進んだ全体の経緯は、僕の英語学習の体験談にまとめています。
コメント