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英語を「知ってる」から「使える」へ。論文から考える5つの練習方法

単語も文法も勉強したのに、英会話になると言葉が止まる。僕もTOEIC875点を取ったあと、DMM英会話では自己紹介の先が続きませんでした。「知っている英語」を、どうやって口から出せるようにするんやろ。そこが次の課題になりました。

僕はその後、フィーリングリッシュで1日1フレーズを学んで口に出し、DMM英会話で使ってみました。reminDOにはフレーズと、自分の体験を話すための文も準備していました。ただ、この教材・アプリ・レッスンの組み合わせが、研究で効果検証されたわけではありません。

この記事では、英語学習の論文を手がかりに、知識を使うための練習を5つ考えます。研究によって測ったのは、単語を思い出す正答率、文法課題、面接での評価、物語を話すときの間など、別々の成果です。「5つ全部やれば仕事で必ず話せる」という話ではなく、今の自分に足りない練習を選ぶ材料にしてください。

目次

1. よく使う表現を、場面と一緒に練習する

単語を一つずつ覚えるだけでなく、「この場面では、こんな言い回しを使う」とまとまりで捉える方法があります。たとえば仕事で進捗を伝えたいなら、単に update という語を覚えるだけでなく、どう報告を切り出すかまで考える。以下の仕事の例は、研究で使われた教材ではなく、この記事からの提案です。

I'd like to give you a quick update on the project.

プロジェクトの進捗を簡単にお伝えしたいです。

言い回しを選んだら、意味と使う場面を確認し、自分が実際に説明する内容に置き換えてみます。「いつでもこの一文を言えばよい」という丸暗記ではなく、用件に合うかを確かめながら使うのが大切です。

Boersら(2006)の研究では、ベルギーの英語専攻学生32人の既存の2群を比べました。8か月の授業で、語の組み合わせに注意を向けた群は、個々の単語や文法に注意を向けた群より、口頭面接の総合評価と流暢さの評価が高くなりました。ただし、発話速度を測った結果ではありません。準備なしの面接部分だけを見ると、使った定型表現の数には明確な群差がありませんでした。

日本人学習者1人が、表現への注意、シャドーイング、短い発話などを組み合わせて練習し、独話の速さや続けて話せる長さが変わったWood(2009)の事例もあります。こちらは対照群がなく、留学中の複合的な練習です。特定のフレーズを覚えるだけの効果とは切り分けられません。僕の「1日1フレーズ」も、この研究と同じ条件で試したものではありません。

2. 答えを見ずに、思い出してみる

英文を見れば意味は分かる。でも、必要な場面でその英語が出てこない。そんなときは、答えを隠して自分から取り出す練習を試せます。

ここで分けたいのは、英語を見聞きして「意味を答える」ことと、伝えたい内容を手がかりに「英語の形を言う」ことです。Yanagisawa(2016)は、日本の大学生18人に擬似英単語24語を学んでもらい、意味を思い出す練習、絵を見て語を声に出す練習、答えを見聞きして復唱する練習を比較しました。直後の発信テストでは、絵から語を言う練習の成績が、ほかの2条件より高くなりました。

一方、1週間後の発信テストでは、復唱との差を明確な優位と断定できません。この実験が測ったのも、絵を見て単語を言えるかであって、自由な会話ではありません。それでも「理解の練習だけでなく、自分から言う方向も練習する」という選び方のヒントにはなります。

仕事の表現で試すなら、先ほどの英文を一度隠して、「進捗を簡単に伝えたい」とだけ見て声に出す。出てこなければ答えを見直して、もう一度言ってみる。思い出せないまま長く悩むことが目的ではなく、確認して次に使える形にするための提案です。

3. 同じ日に詰め込まず、間を空けて戻る

今言えた表現も、次に使うときには出てこないかもしれません。同じものを続けて見るだけで終わらず、別の練習を挟んで戻り、また答えを隠して確かめる。さらに別の日にも復習する、という選択肢があります。

Zhengら(2026)は、日本語を母語とする大学生69人が擬似語48語を学ぶ際、同じ語に続けて触れる条件と、ほかの語を約10分半挟んで再び触れる条件を比べました。語の意味を思い出すテストでは、間隔を挟んだ条件が直後も2日後も高い成績でした。下の図はその結果の推定値です。実線が間隔あり、破線が連続練習。縦線は推定値の幅を示す95%信頼区間です。

擬似語の意味再生テストの推定正答率。間隔を空けた条件の実線が、連続条件の破線より直後と2日後の両方で高い。縦線は95%信頼区間。
図1:語の意味を思い出すテストの比較。実線が間隔あり、破線が連続練習。モデルの推定値と95%信頼区間で、会話力のグラフではありません。出典:Zheng, Nakata, Clenton & Boutorwick (2026), Effects of spacing on the acquisition of explicit and implicit vocabulary knowledge: An approximate replication of Nakata and Elgort (2021), p.379, Figure 3. 原論文 / CC BY 4.0。図・図注を抜粋してPNG化。図中は変更なし。日本語説明は当サイトによる。

この実験の間隔は一回の学習中に設けたものです。別の日に復習する日程まで、この実験だけで決まるわけではありません。第二言語学習の47研究を整理したSerrano(2022)のレビューも、語彙の復習を分けることには根拠がある一方、間隔を長くすればするほどよいとは結論していません。

そこで実践案としては、今日使った表現を後日もう一度、見ずに言ってみる。出てこなければ確認し、次に戻る間隔を調整する。「1日後、3日後、7日後」が誰にでも最適と決まっているわけではありません。

4. 伝え合い、直してもらい、言い直す

相手のいる会話では、用意した英文を言うだけでなく、伝わらなかった点を聞き返されたり、表現を直してもらったりできます。そこで終わらず、何を直したか確かめて、同じ内容を自分の言葉でもう一度伝える。これは仕事の説明を練習するときの提案です。

たとえば担当業務を短く説明し、相手に、説明の分かりにくかった部分を教えてもらう。確認できた表現を一つ選び、元の説明を言い直す。相手の返事を台本どおりに想定する必要はありません。

Ellis、Loewen、Erlam(2006)は、英語学習者34人の既存クラスで、規則動詞の過去形への訂正方法を比べました。30分ずつ2回の課題を行い、最終介入の翌日に行った口頭模倣と文法性判断の検査では、統計的に有意な群差は認められませんでした。その12日後の一部の文法テストでは、誤りの手がかりを明示した条件の成績がよくなりました。測ったのは仕事全般の会話力ではなく、特定の文法項目です。

これとは別に、教室での口頭訂正を扱った15研究・827人のメタ分析(Lyster & Saito, 2010)では、訂正フィードバックを受けた条件が、比較条件を平均的に上回る傾向が報告されています。訂正の方法やテストする項目によって結果は変わるので、誰にでも同じ効果が出るという意味ではありません。

5. 同じ話をもう一度。そのあと、別の話でも試す

同じ話題をもう一度説明すると、言い方が整うことがあります。でも、練習した話題で話せることと、初めての話題でも話せることは別です。そこで「同じ内容で言い直す」と「違う内容で試す」を分けてみます。

Suzuki & Hanzawa(2022)は、日本の大学生79人が絵を見て物語を独話する課題で、同じ物語を6回続けて話す条件、45分または1週間を挟んで話す条件などを比べました。下の図は練習とテストの日程です。左から、連続、短い間隔、長い間隔、テストのみの4条件が並びます。Immediate posttest と Delayed posttest は新しい物語を話す検査、Narrative (Retention) は練習済みの物語で話す速さや間の変化が保たれるかを見る検査です。

物語の独話を連続6回、45分を挟んで3回ずつ、1週間を挟んで3回ずつ行う条件と比較条件の実験日程。新しい物語での検査と、練習した物語の保持検査が別に設けられている。
図2:反復練習の実験日程。練習した物語での話す速さや間の変化が残るかと、新しい物語でも変化が見られるかを分けて調べています。結果ではなく、研究の手順を示す図です。出典:Suzuki & Hanzawa (2022), Massed task repetition is a double-edged sword for fluency development: An EFL classroom study, p.543, Figure 1. 原論文 / CC BY 4.0。図・図注を抜粋してPNG化。図中は変更なし。日本語説明は当サイトによる。

直後の新しい物語では、連続して練習した条件で間が少なくなる一方、発話速度が遅く、同じ語の繰り返しが多い指標もありました。1週間後の新しい物語では、練習日程による明確な差は認められていません。速く話せたか一つで、反復の成果を決められない結果です。

仕事に置き換えるなら、まず担当している案件を説明し、伝わりにくかった箇所を直して同じ案件をもう一度説明する。後日、別の案件についても話してみる。これは研究の日程や「6回」を真似する処方ではなく、練習した内容と初めての内容を分けて確かめるための提案です。

5つを、今の課題に合わせて選ぶ

次の表は、困っていることに応じて試す候補を選ぶための早見表です。原因の診断や、練習効果の保証ではありません。

困っていること 試す練習
言いたいことに合う表現が見つからない よく使う表現を、場面と一緒に確認する
見れば分かるのに口から出ない 答えを隠して、自分から言ってみる
時間がたつと出てこない 間を空けて戻り、もう一度思い出す
話したつもりでも伝わりにくい 相手に確認し、表現を直して言い直す
慣れた話題しか話せない 同じ話題を言い直し、別の話題でも試す

仕事で試すなら、たとえば次のように一つの用件を小さく扱えます。明日の打ち合わせで説明したいことを一つ決める。必要な言い回しを確認し、メモを閉じて一度言う。後でまた言えるか確かめる。話せる相手がいれば説明して分かりにくいところを尋ね、別の用件でも試す。これはこの記事で組み合わせた実践例で、全体の効果を試した研究はありません。 一度に全部できなくても、今必要な一つから始めればええと思います。

なお、学習を「意味のある英語に触れる」「意味を伝える」「言葉の形に注意を向ける」「慣れた内容を滑らかに使う」などの機会から見渡すNation(2007)のFour Strandsは、練習の偏りを考えるための教育上の枠組みです。今回の5方法とは別の実験結果ではなく、時間を全員が厳密に25%ずつ配分すれば伸びるという証明でもありません。

僕が1日1フレーズをDMMで使ってみたのも、自分に足りなかった「知っている表現を口から出す」機会を作るためでした。読者のあなたなら、次の会話で伝えたい内容を一つ選び、どこで止まりそうかを見て、練習を一つ選んでみてください。

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